
「うかがう」と入力すると、変換候補に
伺う・窺う の2つが並ぶことがあります。
ただ──
この二つ、実は 意味がまったく違います。
さらに言えば、
「窺う」は常用漢字ではなく、ふだんの生活ではほぼ使わない語 です。
読めない方・意味を知らない方も珍しくありません。
まずは、この「窺う」という言葉が何を表すのかから確認しましょう。
1. 「窺う」──“様子を見る・推し量る”という意味
普段あまり見かけない漢字ですが、次のような場面で使います。
● 窺うの意味
- そっと様子をうかがう
- 気配や兆しを感じ取る
- 状況から推し量る
● 例文
- 彼の表情から緊張を 窺う。
- 子どもたちの声から楽しそうな気配を 窺える。
- 空の色に、雨の兆しが 窺われる。
観察・推測 に関わる動詞であり、敬語の要素は一切ありません。
2. 「伺う」──訪問・質問の“敬語”
こちらはビジネス文章でも日常でもよく使う語。
謙譲語 として相手に敬意を向ける働きがあります。
● 伺うの意味
- 相手のところへ行く(訪問)
- 相手の意向・都合を聞く(質問)
- 相手の言葉を聞く・教えを受ける
● 例文
- 明後日、会社へ 伺います。
- お考えを 伺えれば 幸いです。
- ご都合を 伺いたく ご連絡しました。
こちらは非常に広く用いられます。
3. 同じ「うかがう」でも、役割はまったく別
見た目は似ていても、意味は大きく離れています。
| 語 | 主な意味 | 敬語性 | 使用頻度 |
|---|---|---|---|
| 伺う | 訪問・質問 | あり(謙譲語) | 高い |
| 窺う | 様子を見る・推測する | なし | 低い(常用外) |
つまり、
誤変換で並んでしまうだけで、本来まったく別の語 です。
4. 判断は簡単
文章を書いていて迷ったら、次の2択で判断できます。
✔ 敬語・訪問・質問 → 伺う
✔ 観察・推測 → 窺う
それ以外の使い分けは必要ありません。
5. 変換で間違いやすい理由
多くの人が迷うのは、意味が近いからではなく、
変換候補に偶然並ぶ ため。
本来は読みさえ分けられれば迷わない種類の言葉です。
むすびに
「伺う」と「窺う」は、読みこそ同じでも、
語の性質も意味も、まったく違うもの と考えるのが自然です。
特に「窺う」は日常でほとんど使わない漢字ですから、
まずは意味を知っておくだけで十分。
訪問・質問の「うかがう」は 伺う を使えば問題ありません。

