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Wavesfactory Re-esser|s音を“分けて加工する”ディエッサー

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■ごきげんポイント

  • s音を含むアタック成分をレイヤーとして分離し、積極的に加工できる
  • EQ・コンプ・クリッパーなどを組み合わせ、s音側だけ別設計が可能
  • 通常のディエッサーでは対処しきれないボーカル素材に対し、新しい解決ルートを提示してくれる

■いまいちポイント

  • 自由度が高く、方向性がないと簡単に破綻する
  • MIX補助というより、音作り寄りの思考が求められる
  • 定価では用途が明確でないと判断しづらい価格帯

誰に向いているか?

  • s音を含むアタック成分を積極的に加工・再構成したい人
  • 通常のディエッサーでは処理しきれないボーカル素材を扱う人
  • 「使い道が具体的に思い浮かぶ」タイプの人

逆に、

  • とりあえず s 音を自然に抑えたい
  • 何も考えずに自動で整えたい

という用途には、あまり向きません。


はじめに

Wavesfactory Re-esser は、
名前こそ「ディエッサー」ですが、
実際に触ってみると 従来のディエッサーとは設計思想が異なる プラグインだと感じます。

一般的なディエッサーが
「s音を検出し、必要な分だけ抑える」
という方向で進化してきたのに対し、

Re-esser は
s音とそれ以外を分離し、どう処理するかをユーザーに委ねる
という立ち位置です。


サウンドとキャラクター

Re-esser の最大の特徴は、
s音を含むアタック成分を 独立したレイヤーとして扱える 点にあります。

たとえば、

  • s音側だけをEQで整え
  • パラレルコンプで密度を加え
  • トーナル成分には別のコンプやディレイをかける

といった処理が可能です。

これにより、

  • s音を抑えつつ
  • ボーカル全体は前に出す

という、従来のディエッサーでは難しかったアプローチが取れます。

また、
s音側にEQやクリッパーを挿せるため、

  • 痛い帯域だけをピンポイントで抑える
  • 音量を下げるのではなく、エッジを整える

といった 選択肢の多さ は、このプラグインならではです。


注意点(重要)

その一方で、
Re-esser は 効きが非常に良い プラグインでもあります。

設定次第では、

  • s音というよりアタック全体が削れてしまう
  • ボーカルの存在感を失わせてしまう

ことも簡単に起こります。

そのため、

今どんな仕上がりを目指しているのか
どこを前に出したいのか

という 完成イメージを持たずに触ると危険 なタイプのツールです。


ジャンル適性

  • 歌物全般(特にボーカルを積極的に前に出したいミックス)
  • EDM / エレクトロ系など、加工前提のボーカル処理
  • 収録状態が悪く、通常のディエッサーでは限界を感じる素材

ナチュラル志向で、
最低限の処理を心がけるミックスでは、
出番は限定的です。


他製品との比較

既存のディエッサー(思想は共通)

SSL、Softube、FabFilter、DMG、Sonnox などは、
UI や操作感に違いはあるものの、

  • s音を検出し
  • 必要な分だけ抑える

という 基本構造は共通しています。

「どれだけ抑えるかをコントロールする」系のディエッサーです。

Wavesfactory Re-esser

Re-esser は、
これらと 競合する製品ではありません

抑える量を調整するのではなく、
分離した音をどう加工するかを考えるツールだからです。

Eventide splitEQ

思想的に最も近いのは、
Eventide splitEQ です。

  • 音を分離し
  • 役割ごとに処理を組み立てる

という発想は共通しており、
splitEQ を理解している人なら、
Re-esser の立ち位置もすぐに腑に落ちると思います。


操作感・機能

UI はシンプルで、
何を分けて、どこを触っているかは分かりやすい設計です。

ただし、
分かりやすさ=安全ではありません。

自由度が高い分、
判断力がそのまま音に反映される プラグインです。


価格と導入判断

価格は €99(約¥17,000/為替変動あり)

用途が明確でない状態では、
やや手を出しづらい価格帯です。

一方で、

  • 使い道がはっきりしている
  • 通常のディエッサーでは足りない

と感じている人にとっては、
代替の効かないツールでもあります。

セールで価格が下がるタイミングがあれば、
ディエッサーの手数を増やす目的で検討するのも現実的です。


まとめ

Wavesfactory Re-esser は、

  • s音を自然に抑えるためのディエッサー
    ではなく
  • ボーカル処理の発想そのものを広げる分離系プロセッサー

だと感じました。

使い道が思い浮かぶ人にとっては強力な武器になり、
そうでない場合は扱いづらく感じるはずです。

「分けてから考える」処理に興味があるなら、
一度チェックする価値はあると思います。

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