購入はこちら

■ごきげんポイント
- UIが整理されており、バンド操作やステージ構造が視覚的に理解しやすい
- Gate → Upward/Spike → Compressor/Ducking という三段構造が明快で設計思想が一貫している
- 従来のマルチバンドとは異なる「動的エネルギー再配分」という発想が非常に意欲的
■いまいちポイント
- Delta Matrix/Priority EQは新しい概念で、正解が直感的に掴みにくい
- 効果的に使うには、従来型マルチバンドとは別の思考が必要で学習コストがかかる
1. 誰に向いているか?
- 低域やノイズフロアの動きを積極的にデザインしたい人
- 既存のマルチバンドに物足りなさを感じている人
- 今までとは違う響きのキックを作りたい人
- 今までとは違う時間変化のグルーブを作りたい人
従来の「整えるためのマルチバンド」というよりも、「動きを作るためのマルチバンド」として使いたい人に向いていると感じます。
2. はじめに

Future MBは、一見すると高機能なマルチバンドコンプレッサーです。最大6バンド構成で、Gate、Upward、Compressor、Delta Matrix、Priority EQといった機能を統合しています。
しかし触り始めてすぐに、「これは普通のマルチバンドではない」と感じました。
既存のミックス用途でどこまで効果的に使えるのかは、正直まだ検証途中です。ただ、初見の段階で「新しい音作りには大いに使えそうだ」と感じたことは確かです。
3. サウンドとキャラクター
Future MBは透明系のMBコンプとは少し方向性が異なります。
音質的に強い色付けがあるわけではありませんが、帯域間の動きが絡むことで結果的にサウンドキャラクターが変わります。
特にDelta Matrixを活用すると、ある帯域の動きが他帯域へ伝播するため、単純なダイナミクス処理というよりも、時間的な変化を含んだサウンドになります。
整えるというよりも、「揺らす」「動かす」といった印象が近いです。
4. ジャンル適性

Future MBはジャンル特化型の製品ではありません。
ただし、使いどころによって向き不向きははっきりします。
■ エレクトロニカ/実験系
ここは明確に武器になります。
- キックの再設計(Spike+Delta Matrix)
- テールの膨張(Upward+長めRelease)
- 帯域別時間構造の設計
- Spectral Modeによる質感変化
これらは音を整えるというより「作り直す」方向に働きます。
静的なEQや通常のコンプでは出にくい挙動が得られるため、
動きを伴った音作りでは強い可能性があります。
■ ロック/ポップスの通常ミックス
帯域整理やピークコントロールを目的とする場合、
よりシンプルなMBコンプのほうが早く確実に仕上がると思います。
Future MBは自由度が高く、
設定の相互作用も大きいため、
作業効率を重視する現場では少し重くなるのではないかと感じました。
■ ボーカル処理
Priority EQ(p.44–45 FutureMB-UserManual-1.0.0-en_US)による検出設計は、
ディエッサー的な応用ができそうです。
Spectral Compressor(p.53–54 FutureMB-UserManual-1.0.0-en_US)は
帯域全体ではなくピークを狙う設計のため、
質感を大きく崩さず処理できる可能性があります。
ただ、即戦力というよりは、
使いこなせば効果を発揮するタイプの処理になるのではないかと思いました。
■ マスタリング用途
Linear Phaseモード(p.48–49 FutureMB-UserManual-1.0.0-en_US)を備えているため、
用途としては十分想定されています。
ただし、
- Delta Matrix
- Spectral処理
- Upwardの積極的挙動
を組み合わせた場合、
透明制御よりも動的変化が前に出やすい印象です。
マスタリング用途では、
かなり抑えめに使う前提になるのではないかと思います。
5. 他製品との比較

Future MBを理解しようとすると、既存のマルチバンドコンプレッサーやダイナミックEQとの違いがどうしても気になります。
一般的なマルチバンドコンプは、「帯域ごとに独立したコンプレッサーが動く」という構造が基本です。設定した帯域が設定した通りに反応する、比較的予測可能な挙動をします。そのため、音を整える、バランスを補正するといった用途には扱いやすい設計です。
Future MBも見た目は最大6バンド構成のマルチバンドですが、Delta MatrixやPriority EQが絡むことで、単なる「帯域別コンプ」ではない動きをします。
特にDelta Matrixは、ある帯域で発生した変化量を他帯域へ再配分する仕組みを持っており、帯域間の関係性そのものを変化させます。
インターナルサイドチェーンを備えたコンプレッサーとの比較も興味深いポイントです。
一般的なサイドチェーンEQは、「どの帯域で検出させるか」を決める仕組みであり、検出信号をフィルタで整形してコンプレッサーの反応量を調整するものです。因果関係が分かりやすく、動作も予測しやすいのが特徴です。
一方でPriority EQは、マニュアルを読む限りでは帯域別に検出感度を設定できる機能に見えますが、実際の挙動はそれだけでは説明しきれない印象があります。複数の検出ポイントを内部で統合し、その結果によって各バンドのゲインリダクション量が決定されているように感じました。
単純に「検出をEQで整形している」だけではなく、複数の評価軸を持った検出システムに近い設計です。ただし、内部アルゴリズムの詳細は公開されておらず、Freeモードを極端に狭く設定した場合との理論的な差異を明確に断言することはできません。
このあたりは正直に言って学習コストが高い部分です。既存のマルチバンドやDynEQの延長線上で理解しようとすると、少し引っかかるところがあります。
しかしその「引っかかり」こそが、本製品の新しさだと感じています。
6. 操作感・機能
UIは非常に分かりやすく整理されています。6バンド構成でありながら視認性が高く、各バンドの状態、クロスオーバー位置、GR量が直感的に把握できます。操作自体で迷うことはほとんどありませんでした。
各バンドには Gate / Upward / Compressor / Delta Matrix / Priority EQ といった機能が統合されており、設計思想はかなり野心的です。ただし、パラメーター自体は整理されており、UIの複雑さがそのまま操作の難しさには直結していません。
Delta Matrix

Delta Matrixは、本製品の中核的な機能です。ある帯域で発生した変化量を他帯域へ再配分するという発想は、一般的なマルチバンドには見られません。
実際に試してみると、あるバンドで発生させたゲインリダクションを別バンドへ送ることができました。検出信号を送るのではなく、確定したGR量そのものが再配分されるため、従側のバンドは主側の動きに連動します。
理屈としては理解できますが、どの設定が音楽的に効果的かは検証を重ねる必要があります。既存のミックス用途で「安全に整える」ために使うには、挙動の予測に慣れが必要です。
一方で、動きを積極的にデザインする用途では強い可能性があります。帯域間の力関係が変わるため、単なる補正ではなく「動きの生成」に近い結果になります。
Priority EQ

Priority EQは、見た目としては検出帯域の感度を調整するEQに見えます。しかし実際には、複数の検出ポイントを内部で統合し、その結果で各バンドのGR量が決定されているようです。
マニュアルからはアルゴリズムの詳細までは読み取れず、内部処理はブラックボックスです。Freeモードを極端に狭くした設定との理論的な違いも、挙動を観察するしかありません。
この部分は明らかに学習コストが高いと感じました。既存のインターナルサイドチェーンやDynEQの延長線上で理解しようとすると、少し引っかかります。
ただし、理解が進めば「帯域間の主従関係を設計する」という新しい発想に繋がる可能性があります。
7. まとめ
Future MBは、見た目こそマルチバンドコンプレッサーですが、実際に触れてみると従来の延長線上にある製品ではありませんでした。
UIは整理されており、操作自体は難しくありません。しかし内部の思想はかなり独特です。特にDelta MatrixとPriority EQは、「帯域ごとに独立して動く」という従来の理解を少し崩してきます。
補正というよりも、「動きそのものを作る」ための道具に近い印象です。
既存のミックス用途で万能に使えると断言できる段階ではありませんが、新しい音作りに対しては強い可能性を感じました。
触ってすぐに答えが出るタイプの製品ではありません。しかし、その分だけ実験的な余白があります。
単なるマルチバンドコンプレッサーを探している方よりも、「今までとは違う動き」を作りたい方に向いているツールだと思います。
購入はこちら↓↓↓


