
はじめに
「御礼」と「お礼」、どっちが正しいの?
「御案内」と「ご案内」、どっちが丁寧なの?
日常でもビジネスでもよく目にする“敬語の入り口”が、この「御」と「お/ご」です。
見た目が似ていて、どちらでも通じるからこそ迷いやすい。
今回はこの3つの表記を、やわらかく整理していきます。
【例文で体感】「御」と「お/ご」の違い
まずは感覚で違いをつかんでみましょう。
「御案内をお送りします。」
「ご案内をお送りします。」
前者は少しかしこまった印象、後者は自然でやさしい印象を受けませんか?
「御」はもともと格式の高い表記で、フォーマルな文書や儀礼的な表現に使われることが多いです。
一方の「お/ご」は、話し言葉やメール、Web文書など現代的な場面で使われやすい表記です。
たとえば次のように整理できます。
用途 | 「御」 | 「お/ご」 |
---|---|---|
ビジネス | 御社、御中、御礼 | ご案内、ご連絡、ご対応 |
日常 | (あまり使わない) | お茶、お金、ご飯 |
固定表現 | 御用達、御免、御歳暮 | - |

「御」と「お/ご」の本来の違い
「御」は、漢語の敬語接頭語です。
古くから文語や公文書で使われ、「尊敬・丁寧」を表す書き言葉でした。
その名残で、今も公的な文書・封筒の宛名などでは「御」が好まれます。
一方、「お/ご」は「御」を平仮名化したもの。
もともと「御(おん・ご)」が変化して定着した形です。
つまり、
- 「御」=もともとの正式な漢字表記(やや堅め)
- 「お/ご」=現代語化された柔らかい表記(親しみやすい)
という関係なのです。
「お」と「ご」の使い分けルール
もう一つ、迷いやすいのが「お」と「ご」の違い。
基本ルールはこうです。
接頭語 | 対象語の種類 | 例 |
---|---|---|
お | 和語(もともと日本語) | お茶・お金・お花・お手紙 |
ご | 漢語(中国由来の語) | ご案内・ご利用・ご連絡・ご家族 |
ただし、「ごゆっくり」や「お電話」など、例外も多く存在します。
これは音の響きや慣用によるもので、実際の運用では「自然に聞こえる方」を選ぶのが正解です。
固定表現と慣用の世界
中には、もう“定番”として固定されているものもあります。
- 御中(おんちゅう):会社や団体あての宛名専用。
- 御社(おんしゃ):会話で使う尊称(文書では「貴社」)。
- 御礼(おれい):「御+礼」で感謝を表す正式表現。
- 御用達(ごようたし):格式ある老舗などで使われる古風な尊称。
どれも「御」を使うことで、格式・敬意・伝統的な響きを持たせています。
まとめ
「御」は書き言葉、「お/ご」は話し言葉。
どちらが正しいというより、場面と相手に合わせて使い分けることが大切です。
- 柔らかく伝えたい → 「お/ご」
- かしこまった印象にしたい → 「御」
たとえば、メールなら「ご案内」「ご連絡」が自然。
挨拶状や賞状では「御礼」「御芳名」などがしっくりきます。
敬語は堅苦しいものではなく、相手を思いやるための表現。
使い分けを知っているだけで、言葉の印象はぐっと洗練されます。